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レポート2023.04.15地上戦を生き延びた沖縄の人びとの切実な願い「命どぅ宝」と画家・丸木夫妻の深い思想をたどるドキュメンタリー。『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』舞台挨拶

4月15日(土)、那覇市の桜坂劇場 ホールBで『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』の上映と舞台挨拶が行われました。

この作品は、《原爆の図》で知られる画家で夫婦の、丸木位里・丸木俊が晩年に取り組んだ集大成《沖縄戦の図》14部をたどるアートドキュメンタリー。最晩年の2人が激戦地・沖縄を歩き、人々に会い、琉球文化と芸能を創作のエネルギーにした作品を通して「人間といのち」への深い鎮魂と洞察の軌跡をたどる物語となっています。

上映終了後の舞台挨拶には河邑厚徳監督、沖縄民謡歌手の新垣成世、教育ファシリテーターの平仲稚菜、佐喜眞美術館館長の佐喜眞道夫、音楽監督の尾上政幸が登壇しました。

元NHKプロデューサーの河邑監督は、「実は沖縄とは縁があって、NHKに入局してから仕事の節目の中で、常にいろいろな形で沖縄に関する番組の制作を続けてきたのですが、今日見て頂いたのはその最新作です。まだこれからも沖縄については出来る限りのことをやりたいなと思っています。今日はみなさん見て頂いて本当にありがとうございます。」と挨拶。

佐喜眞館長は「沖縄戦の図は、画家、丸木位里・丸木俊によって深い深い哲学的な側面を持って描かれている。そういうのが河邑さんの作品によって、また尾上さんの音楽によって見事に伝わってきた」と興奮気味に語ってくれました。

テーマ音楽について尾上監督は、「試行錯誤を重ねてようやく完成した音楽になっています。最後の約10分近くの音楽ですが、ほぼナレーションがない中で、何を訴えればいいのか、音楽で丸木夫妻のメッセージをどう伝えるのか、そこを焦点にして頑張ってきた甲斐があったかなと思っています」とコメント。

さらにこの作品を制作するにあたっての思いを聞かれた河邑監督は、「作り手が全面に出るのではなくて、丸木さんがこの絵を描きながら何を考えて、何を伝えようとしたのかというのを、映像の形で多くの人に理解していただきたいです。絵というのは描かれたのは数十年前かもしれないですが、永遠の今なんです。見る瞬間その時が絵を見るという行為で、それを少しでも丸木さんたちの思いに沿うようなものにしたいと思って作ったものです。偉大な芸術家の作品をこういう形で残していきたいというのが全てです」と話してくれました。

また、YouTubeチャンネル「すくぶん」で沖縄戦の惨状や基地問題をテーマにした学習プログラムを配信している新垣と平仲は、若い世代へ伝えていく思いを聞かれ、新垣は「『戦場を恨む母』という歌を沖縄戦の図を目の前にして歌ったときに、作った方のお孫さんが『この歌をずっと大事に歌っていってね』と声をかけてくれた」というエピソードを明かし、「実際に体験していないのに戦争についての歌を歌っていいのかという葛藤があったが、歌い継いでいく責任感や重みを感じ、これで間違いじゃなかったんだと感じた」と述べると、平仲も「良い意味でラフさというか、日常会話の中で、沖縄戦や地元の歴史文化について知らない世代の人も話をしていいんだと、作品がみなさんの背中を押すきっかけになって友達や家族で話をする空気が広がっていけばいいな」と互いの思いを語りました。

最後に、河邑監督は「まだまだ撮り終えていない。これからまた、佐喜眞さんにお願いして、第2弾を作りたい。この映像を見た上で、美術館でもう一回絵を見て、未来へのメッセージを読み取っていただければうれしい」と締めくくりこの日の舞台挨拶は満席の中、盛況のうちに終了しました。